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出会いを料理にする。器も、空間も、料理の一部 【ごだん 宮ざわ】大山 委宏氏が考える日本料理
2026/10/23

出会いを料理にする。器も、空間も、料理の一部 【ごだん 宮ざわ】大山 委宏氏が考える日本料理

京都にある日本料理の名店【ごだん 宮ざわ】で料理長を務める大山 委宏氏。岐阜の居酒屋を営む家庭で育ち、京都の調理師学校を経て料理の道へ進んだ。宮澤 政人氏のもとで修業を重ねるなかで、料理の味だけではなく、所作や器、設え、そして食事の時間そのものまで含めて料理を考えるようになったという。季節や食材、人との出会いを大切にしながら、その時にしか生まれない料理を追求する大山氏。日本料理の魅力を次世代へ伝えたいという思いとともに、自然体で料理と向き合う大山氏の現在についてお話を伺った。

導かれるように、料理の道へ

ーーー料理人を志したきっかけは?

岐阜県中津川の実家で、両親が居酒屋を経営していたので、小さいころから食に携わることが多かったんです。ただ、自分から料理人になろうと意識していたわけではありませんでした。高校卒業が近づいて、進学するか、地元で就職するかという選択を迫られた時に、大学で何かを学ぶことや、企業に入って働くことよりも、料理人になろうという気持ちに気付いたんです。

自然と料理人になるなら「日本料理」というイメージがあり、本格的に学ぶなら京都へ行こうと決意しました。

ーーー修業時代について教えてください。

高校を卒業し京都の調理師学校で2年学んだ後に、一度日本料理店に就職したんですが、辞めてしまって。地元に帰って、一年間ほど遊んでいたんです。でも、心から楽しく過ごせていない感じがずっとあって、もう一度料理人をやろうと決意しました。

ちょうどそのタイミングで、以前の職場の先輩から「宮澤さんのところで働かないか。明日から来てほしい」と連絡があったんです。「分かりました」と返事をして、次の日から京都に戻り、今に至ります。

導かれるような感覚で【ごだん 宮ざわ】でお世話になります。27歳の頃でした。

宮澤大将のもとで修業して、途中でコロナ禍になったので、オンライン販売も立ち上げました。それが一段落して落ち着いた頃、3店舗目となる【獨歩(どっぽ)】ができたタイミングで料理長が替わり、その一年後に僕が副料理長になりました。修業に入って8年後のことです。

料理の先にある「美しさ」を知る

ーーー宮澤大将のもとで学び、意識が変わった部分や、影響を受けたことはありますか?

抽象的すぎますが、全部です。

特に、すべてを言葉に表さないというか、言葉がなくても伝わる美しさや感動を大切にされている姿勢にはとても影響を受けました。

それまでは、料理はおいしいのがすべてと思っていましたが、そこを根本から覆されました。「所作」であったり、「設え」や「器」についてであったり。料理だけを意識しているのでは足りないんだと気付きました。

最初は何を言われているのかも理解できなくて、毎日へこんでいました。でも、やり続けることが大切だったなと今は感じています。

続けてきたからこそ、今の自分があります。

分からないと思っても、まず体験して興味を持つことで、そこから自分でも器を買ってみたりする。そうやって前向きに行動することで、気付きがあったり、出会いがあったりします。そういうところが、学ぶうえで大切で面白い部分だと思います。

宮澤大将は、自分が本気で愛でているもので、お客様に喜んでいただく。そういう姿勢からも、たくさんのことを学んでいます。

ーーー大山様が料理長に就任され、新体制として何か心掛けていることはありますか?

「色々な美しさ」ということを、僕なりの表現でお伝えできればと考えています。それは目に見える美しさだけではなくて、雰囲気など、視界以外から感じるものでもあります。自分が経験して感じたものを表現して、それをお客様に喜んでいただけたら幸いです。食事体験まで含めて料理が完結すると思っています。

目の前の出会いを、一皿につなげる

ーーー料理について、またコースを設計するうえで大切にされていることがあれば教えてください。

その時の出会いを大切にしています。

少し前にも、ある農家さんがいらしてくださった際に、「こんな野菜を作っています」とお話を伺って。「一通り送ってください」とお願いしました。

実際に届いたものを見て、自分の感覚で、その野菜たちを使ってみる。すぐに献立に入れなくても、次の料理につながることもありますし、僕たちがおいしくいただくこともある。そうやって、いろいろな用途や新しい発想につながっていくんです。

そういう意味では、五感から得られるものも大切にしています。暑い時には冷たいものが食べたくなりますし、秋の風や香りを感じて、「栗を使ったおいしいものができそうだな」と思い浮かぶこともあります。

近くに「みどりなす」という八百屋さんがあるのですが、そこへ行って、今、目の前にある野菜を見るんです。旬のものを見ながら、「これとこれを合わせたらおいしそうだな」と考えてみたり、「そういえば魚も今の時期はこういうものがあったな」と思ったら、魚屋さんに電話してみる。すると、「今こんなものが上がっていますよ」とか、「おもしろいモノがありますよ」と提示していただくこともあります。

目の前にある食材や季節、人とのめぐり合わせ。そういうものを大事にしながら、その時にできる料理を考えています。

ーーー食材の仕入れにこだわりはありますか?

魚に関しては、三重県と大分県のものを主に仕入れています。

三重県には「丸舟水産」という魚屋さんがあって、もう20年以上のお付き合いになります。僕が入る前から、ずっとお付き合いのある魚屋さんで、そこから主に魚を週2回配達してもらっています。

それに加えて、大分の「木村鮮魚(きむら政歳商店)」さんにもお願いしています。「クエ」や「シロアマダイ」など、三重では入らないような魚を空輸で送ってもらっています。

野菜は、兵庫県の「吉良農園」さんのものを使っています。

もちろん、八百屋さんには京都の野菜も並んでいます。実際に使うこともありますし、良いものがあればいただいています。

この先、さらに色々な出会いがあると思うとワクワクします。

器も、空間も、料理の一部

ーーー器の扱いについて意識されていることがあれば教えてください。

意識しているのは、器に対する料理のバランスです。

量としてもそうですし、例えば「この魚を焼き魚にして、これくらいの量を使いたい」となった時に、それに対してどんな器が合うかを考えます。

日本料理は、器の中の空白や余白がしっかり決まると、とても美しく見えると思います。なので、まず寸法からイメージします。

コース全体を構成するときにも、例えば寸法の同じ染め付けを二つ使わないようにする。使ったとしても、出すタイミングをずらしたり、夏だったらガラスの器を使ってみるとか。逆に、塗りものを一番最初に持ってきてみたり。そういうことも考えます。その時にパッと見て、「この器に盛ったらおいしそうだな」と思うこともあります。

古美術屋さんに行った際に、その日は買わずに帰ったとしても、器を眺める中で、「例えば白味噌を下に敷いて、マナガツオを焼いて、蓋をしたらおいしそうだな」と、料理のインスピレーションを受けることもあります。

季節によって器を全部入れ替えるまではしませんが、少しずつ入れ替えたりはしています。それこそ【じき 宮ざわ】や【獨歩】との間で一部器の交換をしたり。そうやって季節に合わせて器を変えることもあります。

ーーー空間についてのこだわりもあれば教えていただけますか?

設えには土壁や美濃和紙を使っていたり、カウンターの材は栗の一枚板です。天井は黒部杉の網代天井です。少し勾配をつけていて、一体感が生まれるような空間になっています。

この天井は宮澤大将がいつかやりたいと思っていたそうです。

なかなかこれを組める職人さんもいなくて。黒部杉の枌板(へぎいた)も、大変貴重なものなんです。九州から職人さんを呼んで、一週間かけて仕上げていただきました。

ーーーお客様に過ごしていただくうえでのメッセージがあればお聞かせください。

店内は土壁で落ち着いた空間になっております。

この空間で、僕たち料理人とお客様が一体となって、料理を楽しんでいただければと思っております。食事体験を共有するというか、そこまで含めての料理だと考えています。

自分で言うのもなんですが、良い空間だと思うので、皆様に体験していただきたいです。

受け継ぐだけではなく、これからをつくる

ーーー今後の展望はありますか?

お客様が求めている先をどんどん追求していきたいです。

まずは自分が、誰よりも誇れるくらいに、お客様に何を提供できるのか、どうすれば喜んでいただけるのかということを、もっともっと突き詰めたいなと思っています。

それが料理や花、器、お茶であったり。決まった正解は分からないです。

格好つけずに生きていく。とってつけたようなものではなく、あくまで「自然体」で、自分の中から生み出されるものを大事にしたいです。

ーーー日本料理の可能性や文化の継承について、お考えがあればお聞かせください。

若い方が、もっと日本料理に触れられるような環境になればいいなと考えています。実際に、料理人を目指している若い方でも、日本料理を食べに行った経験がないという方が少なくないと感じました。そういう話を聞いていると、やはり一度でも日本料理を体験する機会があればいいんじゃないかなと思っています。

これから料理人になる方たちには、「自分たちがこれからする仕事って、こんなに素晴らしいものなんだ」と感じてもらえるような体験があってほしいと思います。そうすれば、将来料理人になりたいと思う人も増えるかもしれないですし、それぞれいろんな場所で、日本料理を支えていく人になるかもしれない。

若い時の経験は、本当に忘れられないものになることもあると思います。僕自身、一番初めに体験した料理屋さんは今でも忘れられないです。

もちろん、全員に当てはまるものではないかもしれませんが、一つのきっかけとして、若い方にもっと日本料理の良さを感じる機会があってほしいです。

日本料理に限らず、若い世代の人たちが、いろいろなものを経験したり、知ったりするきっかけがもっと身近にあって、経験が積み重なっていくことで、これからの土壌もつくられていくんじゃないかなと思うんです。

例えば、去年はお米が高騰して手に入りにくくなった時期がありました。それでも日本人はお米を求める。それだけ昔から、お米の文化は根付いている。「お米ってこんなにおいしいんだ」と感じてもらえるような、きっかけを提供したいですね。

ーーー日本料理は価格や敷居の高さから、若い世代にとって触れる機会が限られる面もあると思います。そうした中で、ご自身ができることについてお聞かせください。

もともとお昼の営業は13,500円でやっていたんですけれど、8,000円に改定しました。自分たちにできることって何だろうと考えた際、先ほども述べたように、いろんな方にもっと日本料理に触れていただくきっかけづくりがしたいと思いました。

お店には素晴らしい空間があるので、あとは自分たちの工夫次第で、できることはたくさんあると思っています。

特に10代、20代、30代の方に日本料理を感じていただけたら幸いです。

ーーー最後に大山様にとって「おいしい」とは?

「心を豊かにするもの」

料理の味を追い求めるだけではなく、器や所作、設え、空間、そして人とのつながりまで含めて食事体験を考える大山氏。その根底にあるのは、目の前にある食材や季節、人との出会いを大切にしながら、その時にしか生まれないものを表現したいという思い。「格好つけずに生きていく」「自然体で、自分の中から生み出されるものを大事にしたい」という言葉からも、料理と向き合う姿勢が伝わってくる。若い世代へ日本料理の魅力を届けたいという思いも胸に、これからどのような料理を生み出していくのか。大山氏の歩みは、料理そのものだけでなく、食を取り巻く時間の豊かさについても考えさせてくれる。


取材・文/AutoReserve Magazine編集部

撮影/馬場 昇一

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