ーーーお二人が料理の道に進んだきっかけを教えてください。
八木シェフ:僕たちは保育園の年長から、もう一人のシェフの北川は小学校一年生の頃からずっと一緒にいて、実家も徒歩圏内で幼馴染です。僕は高校卒業後、市役所で公務員として働いていて、梅は回転寿司の機械製造の会社で働き始めました。それぞれ飲食店とは違う進路からスタートしましたが、面白くなくて、「何か面白いことをやろうよ」となったんです。「面白いこと」を考えた時に、居酒屋のように皆んなで集まって楽しめる空間を作ろうとなったんです。
梅シェフ:僕は元々、飲食の仕事に興味があったわけではなくて。最初の仕事を辞めて上京した時に、アルバイトとして飲食店で働き始めて料理の楽しさに気付きました。この世界でなら面白いことができるんじゃないかと三人で話して、それぞれ飲食業界の道に進み、本気で料理人を目指すことになりました。
八木シェフ:僕たちは料理がすごく好きですが、最初のスタートは「空間を作りたい」から始まっています。これまで一緒に音楽や洋服、ストリートカルチャーなどを楽しんできて、料理も表現の一つという感覚でしたね。自分たちで空間そのものを作れたら面白いんじゃないか、という発想から料理の道に進みました。
ーーー本場スペインでも修業をされたそうですね。
梅シェフ:当時はスペインの伝説的レストラン【エル・ブジ】が世界を席巻しており、日本にも料理スタイルや情報が入ってきていて、僕も実際に現地で体験したいと思ったんです。当時働いていた飲食店を辞めて、27歳の時にスペインに渡りました。世界の食を変えたと言われる環境に身を置くことで、僕たちの感性も影響を受けましたし、貴重な経験となりましたね。
八木シェフ:僕は金沢のイタリア料理店で修業後、同じく27歳の時に梅と一緒にスペインに渡りました。それぞれ住む場所や働いた店は異なりますが、同じ時期に現地で過ごしていました。実際に行ってみて、バルで提供されるクラシックなスペイン料理に惚れこみましたし、ピンチョスやタパスも日本の居酒屋のおつまみのようで、カジュアルな食文化もすんなりと受け入れることができました。また、スペインのカタルーニャ料理は山と海の幸を組み合わせた料理が代表的ですが、金沢も山と海の幸が豊富なので共通点を感じ、金沢でも地元のものを使ってスペイン料理を表現できると思いましたね。
梅シェフ:ただ、スペインでの経験はあくまで10年以上前の話で、現代で当時流行っていたことを表現するだけでは全く意味がないと思っています。あくまでスペイン修行時代の出来事は経験で、僕たちが今やるべきことは「この土地の食材を使い、この場所だから表現できるものを作ること」だと思っています。
八木シェフ:今年、僕たちは15年ぶりにスペインに行きましたが、スペイン自体も当時からすごく進化していました。彼らは進化しているのに、僕たちが当時のものを守り続けていたらおかしいですよね。僕たちにとっても当時のことはあくまで一経験にしか過ぎず、帰国後にも様々なことを体験し、学びながら成長してきました。
ーーー帰国後はどのような経験を積みましたか?
八木シェフ:帰国後は独立に向けて、一つのジャンルだけではなくもう少し幅広く料理の世界を経験しておこうと思い、東京のスペイン料理店やスペインバルのほか、イタリアンスパニッシュなどでも働きました。結婚して子供が生まれるタイミングで地元に帰ることになり、数年前から声を掛けていただいていた金沢駅前のスペインバル【Blanco】のシェフとして働くことになりました。金沢に戻ってから改めて食材や環境の良さを実感し、三人で店をやるのなら東京ではなく金沢が良いと梅と北川に話し、店作りに向けて本格的に始動することになりました。
梅シェフ:僕は帰国後に東京のフレンチやスペインバルなどで修行をしました。八木に続き、僕と北川も合流して当店を開業したのは2017年です。飲食の道に進むことを決めた時は30歳弱で店を持てたらと話していましたが、実際に始めたのは37歳です。周りと比べると独立は遅いですし独立するまでに15年以上修行していますが、全て僕たちがやりたいことをやるための準備期間だったと思っていて、準備している間も三人で独立する夢は変わらず持ち続けていましたね。
ーーー開業するにあたり、お店の形態などはどのように決めましたか?
八木シェフ:バルかレストランどちらでやるかという話になった時、バルは簡単に始められて成功がしやすそうだと思いました。でも、それは果たして僕たちがやりたいことなのかと考えた時に、もしバルで成功したとしてもレストランで成功している人を見て悔しくなるんじゃないかと思ったんです。本気でやるのなら後悔しない選択をしようと、レストランでチャレンジすることにしました。
梅シェフ:自信はありましたが、たとえバルがうまくいったとしても簡単に成功する人生では面白くないと思ったんです。僕たちは料理からではなく「面白いことをやろう」というところからスタートしたので、一般的な料理人の方々とは違うところなのかもしれません。面白いことをやろうと言って始めたはずなのに、途中でもし面白くない選択肢を選んだら訳がわからないですよね(笑)。
ーーーどのようにお店をオープンしましたか?
八木シェフ:開業した当時、フレンチやイタリアンの高級店は全国にありましたが、高級スペイン料理店は東京でも数えるほどしかなく、地方では見たことがありませんでした。だから、いきなり高級路線でやるのは少し怖いなという肌感覚がありましたね。最初は価格を抑えてランチやコース料理を提供する店として始めました。客入りはとても良かったのですが、客単価の安さゆえにとても経営を続けられる状態ではなくなり、コース料理の価格を上げて食材も金額に見合うものを揃えながら、少しずつ高級路線になっていきました。
正直なところ、たとえ1,000円でも値段を変える時は怖いです。価格を変えることで離れてしまうお客様は一定数います。ただ、スタッフの人件費がかかりますし、食材は良いものを使いたい。料理人として店をやるからには、心の根底にどの店にも負けたくないという気持ちもあります。負けないためには良いものを作るしかないですよね。僕たちが作りたいものを作るためには価格を上げるしかなく、毎回勇気を持って選択をしてきました。
ーーーお店が変化したと思うターニングポイントはありますか?
梅シェフ:コロナ禍で営業がままならなくなった時、余った食材でチーズケーキを作ってみたんですよ。それが瞬く間に売り切れて人気に火がつき、全国で売れるようになりました。その時に専門店を開くことを決め、金沢駅で【PiSO by respiracion】というチーズケーキ専門店を始めたことで、経営にも弾みがつきました。2021年にミシュラン二ツ星をいただいたことをきっかけに当店の予約も一気に埋まり、予約待ちの状態が続くようになりましたね。
八木シェフ:スペインバル【comer】も開きましたが、経営はなかなか安定せず苦しい時が続き、銀行から経営改善のためにコンサルタントを入れてほしいと言われたこともありました。それでもチーズケーキ専門店やミシュラン二ツ星獲得など、諦めずに努力して巻き返して成功した結果、銀行からブランディングや開業をテーマに講演会をしてほしいと依頼されるようになり、今では講演も行っています。
ーーーお店が軌道に乗るまで、どんなことを悩みましたか?
梅シェフ:石川県は和食店が強くて金沢には日本有数の名店も幾つかあり、ジャンルは異なりますが当店はどのように違いを出すかということを悩みましたね。例えば東京のお客様が金沢にいらっしゃる場合、何日間か滞在される中で複数の人気店を予約され、各レストランを巡るツアーのようになることがあります。当店が比較されることもあり、当初はそれが辛かったですね。名店で使われている新鮮な食材を使った方が良いのかと悩むこともありましたが、自分たちのオリジナリティを少しずつ確立し、お客様に喜んでいただけているのを肌で感じるようになってからは気にならなくなりました。当店の方が面白いと自信を持って思えますし、強くなったと思います。
ーーー料理を提供する上で、どのようなことを大切にしていますか?
梅シェフ:お客様に一番おいしい状態で召し上がっていただけるよう、提供する何分前に魚の骨を外すなど全て逆算しながら料理を作っています。そしてお客様にきちんと料理説明まですることで料理が完成するので、提供する際は産地や調理方法なども含めてしっかりとお伝えしています。一品一品に手をかけ、想いが込められているので、ホールスタッフたちは大変かもしれません(笑)。
また、料理と合わせてローカルな文化も魅せていきたいという想いから、器は全て石川県の作家さんにオーダーメイドで作っていただいています。例えば、一品目の甘海老の料理に使ったお皿は、現代作家の藤田 和氏にお願いして海老が海の底にいるようなイメージで作っていただきました。料理のイメージや空間に合うような作品を作る作家さんを常に探しながら、完全にオリジナルの器を当店では使用しています。
ーーー食材へのこだわりを教えてください。
梅シェフ:魚は毎朝スーシェフが漁港に行って魚を仕入れています。漁師さんとの関係も構築しており、海が荒れる予定で船が出ない日も事前に分かるので、予め備えることもできます。仕入れた魚は冷蔵庫で熟成させながら、提供に最適なタイミングを見極めています。魚の状態によって当日使用する魚が変わることもありますし、それぞれの魚を一番良い状態で使うことを重視しています。山の素材は僕たち自らが採ってくることもありますし、業者さんが人里離れた場所まで採ってきてくださることもあります。新しい生産者さんを探す時には、すでに知り合いの生産者の方にご紹介していただくこともありますね。石川県の名産品を使用した料理も提供しながら、どこの店でも食べられるものより、「この店でしか食べられないもの」を提供するための食材をずっと探しています。
食材を活かす上で熱源にもこだわり、最近は薪も使い始めています。薪で焼く時間のピークは10分位しかないので、お客様の提供時間に合わせて焼く難しさもあり、まだまだ勉強中ですが炭とは違った香りづけができるので面白いです。例えばベシャメルソースを作って薪のそばに置いておくと、薪特有の燻製したような香りづけができるため、表現の幅も広がっています。
ーーー自家農園で野菜の栽培もされているそうですね。
梅シェフ:当店が次のステップに進むためには、食材を全て発注するのではなく作れるものは自分たちの手で作りたいという想いがあり、農園を所有し、畑にコンポストを置いて分解・発酵させて堆肥を作る取り組みも始めました。近隣には親しい農家さんも多く、土壌や野菜の育ち方など様々なことを教えていただいています。例えば、茄子は同じ場所で続けて栽培すると生育が悪くなることがありますが、あえて3年目は同じ畑で栽培することで茄子がどのように育つのか、その違いを農家さんから細かく共有していただいたり。
野菜の状態を見分けられるようになると料理にも活かせるので、日々勉強になっています。また、農家さんとの繋がりで良い種を仕入れさせていただくこともあり、本当に助けられていますね。
ーーー調味料から作っているものも多いそうですね。
梅シェフ:野菜を漬け込んでビネガーも作っていますし、砂糖の代わりに柿の皮を煮詰めて黒糖のようにしたものを作ったりしています。ほかにも自家製の塩麴や松ぼっくりの酵素シロップなど、一から自分たちの手で作ることで、お客様には当店に食べに来た意味をより体感していただきたいという想いがあります。パンも自家製にこだわり、ワイナリーの「セイズファーム」からワイン製造時に潰したブドウの皮をいただいて、発酵させて酵母にしてからパンを作っています。また、毎日パンを提供する際に必ず端が余りますが、その中の酵母はまだ生きているので、粉末にして麹と混ぜて自家製味噌も作っていますよ。
ーーー能登の環境・資源を後世に繋げる活動「NOTOFUE」にも参画しているそうですね。
梅シェフ:「NOTOFUE」は、能登の豊かな里山・里海の環境や資源を後世に繋げるために、食に関わる料理人を中心として発足した団体で、僕たちも参加しています。メンバーの一人である池端 隼也シェフは、自身のフレンチレストラン【ラトリエ・ドゥ・ノト】を震災で失っています。震災後も池端シェフは現地に残り、被災地の方々を助けるために毎日何千食もの炊き出しを行い、借金も抱えながら継続しています。さらに復興への道筋を立てるために、輪島で【mebuki-芽吹-】という飲食店の開業に向けて今は動いているようです。輪島では生きるか死ぬかという状態が今もまだ続いており、「NOTOFUE」の活動は震災から率先して立て直しを図る仲間を支援する動きの方が今は強く、僕たちも少しでも力になりたいと思っています。
ーーー被災地復興にはどのように貢献していると思いますか?
八木シェフ:まず能登半島地震から約一年が経とうとしていて、一部復興している所もあれば全く復興していない所もありますが、時の経過と共に人々の間で風化してしまっているように感じるので、もし震災の募金活動を目にしたら5円でも10円でも募金してもらえたら嬉しいです。
僕たちは、料理人として生産者さんに食材を注文することが一番の支援になると思っています。1月1日の地震後、僕たちは6日から営業を再開することにしました。能登の農家さんたちが収穫できるかどうかも分からない状況で迷いましたが、注文をしたところ、届いた食材の箱に「ありがとう」と書かれていたんです。それを見て、僕たちは「あなた方の食材を欲しがっている人がいる」ということを伝えることで、生産者さんのパワーになるのだと実感しました。能登の地域資源をどんどん活用しながら、お客様に当店にお越しいただくことで、復興の原動力になると信じています。
ーーー地方でお店をやる難しさやお客様の感触を教えてください。
八木シェフ:2年〜4年に一度は大雪が降り交通網が全てストップして、二週間ほどの予約が全てキャンセルになることもあるため、毎年積雪を恐れていますね。僕たちは「金澤から世界へ」をコンセプトに、世界中からお客様が来ていただけるようなレストランとしてやっていますが、金沢まで来ていただくことには少なからずハードルがあります。そんな中でも県外をはじめ、海外のお客様に多くお越しいただいており、現在は半分くらいは海外のお客様です。2〜3ヶ月先の予約をネット開放すると、ありがたいことに今はすぐに埋まってしまうような状況で、以前よりも席数を増やしました。
梅シェフ:海外のお客様は好き嫌いや食べられないものも多いため、その点もできる限り配慮しています。また、食べた瞬間に分かりやすく「おいしい」と感じるものが好まれる傾向にありますが、僕たちは口の中で広がる繊細なおいしさを追求しています。例えば、「しみじみ感じるおいしさ」や温かくて優しい味のスープを飲んだ時の「染み渡るおいしさ」など、一口においしいと言っても様々な種類がありますよね。僕たちはそれぞれのおいしさを狙って味を作り出しているので、単純なおいしさだけではない「味わい深いおいしさ」を届けられたら嬉しいですね。
ーーーお店をやる中でそれぞれどのように役割分担をしていますか?
八木シェフ:経営方針や今後の展開については全員で話し合って決めています。何か話し合いをして三人で「面白い!」となったらやりますし、三人で満場一致じゃない時はやらないですね。自分が面白くないと思えば、きっと二人も面白いとは思わないだろうと分かるので、満場一致にならないような案件はそもそも持ち込まないです(笑)。
小さい頃からずっと一緒にいて互いにどこが強みかを分かっているので、得意分野に応じて「これは梅に」「これは僕が」という感じで自然と役割分担できています。梅はクリエイティビティに長けていて美的センスがあり、空間作りや料理でクリエイティブな部分を特に頼りにしています。
梅シェフ:三人ともバスケを一緒にやっていましたが、当時八木はキャプテンで北川は副キャプテンだったんです。その役割分担は各々の個性をすごくよく表していると思っていて、八木は会社の方針に合わせて皆んなを同じ方向に向かせるリーダーシップがあります。ポジティブに動く力と勇気を持っていて、僕も影響を受けていますね。
八木シェフ:北川は数字に強く、銀行とのやり取りをはじめ渉外を中心に担当し、現在はスペインバルとチーズケーキ専門店の方を見てくれています。人間関係を築くことが得意で、すぐに仕事を持ってきてくれます。本当はもっと仕事を持ってこれるかもしれませんが、多分僕らが面白がらないと思って断っているのかもしれません(笑)。
梅シェフ:どんどん仕事の依頼自体は来ますし、広げようと思えば仕事を広げられますが、僕たちの手が届き、目で見える範囲内でやるようにしていますね。手を広げすぎると僕たちのカラーが薄くなるような感覚があり、結果的に面白くなくなってしまうので。
ーーー【respiración】にはどんなスタッフが集まっていますか?
八木シェフ:僕たちが作るものや空気感が外にも伝わっているようで、現在働いているキッチンスタッフは全国各地や海外から集まっています。中には海外の三ツ星レストランで働いた後、帰国して東京を経由せずに当店が良いと言って来てくれた子もいます。僕たちが面白いと思うことをして、その魅力が発信できているのだという自負があります。
僕たちは現在40代ですが、マネージャーやスーシェフとして働く20〜30代のかわいい後輩のほか、僕たち自身にも子どもがいます。若い世代がついてきてくれていることを考えると、ちゃんと良いものを残していかなければならないと思います。もし僕たちが現状維持で満足していたら、きっと彼らは当店を選んで働いていないと思います。だから、僕たちは守りに入らず、作りたいと思うものを目指して貪欲に攻めていきたいですね。きっと彼らも、将来面白いものも作っていくのでしょうけど、年齢を経た彼らに「やっぱりあの三人は面白いよな」と言わせたいですね。
ーーーこれからもお二人が大切にしていきたい想いを教えてください。
梅シェフ:「ここでしか出せないもの」がないと、地方までお客様は来ないですよね。東京や大阪・福岡などの大都市圏ではなく、金沢まで来るのはお金も時間もかかるので、魅力がないといけない。金沢で僕たちが料理を作る意味を常に考えています。
僕たちはスペイン料理を作ろうとは思っていないんです。料理をする中でスペイン料理というフィルターを少し通しているだけで、食材はもちろん地元のものを使い、「この土地、この空間で表現できるもの」を作っています。もし金沢で本場の店の真似をしても、スペインの星付き店と対等ではないと思うんです。この地に根付いたものを活かして料理を進化させていく方が、スペイン現地のシェフとも対等に戦えると思っています。
八木シェフ:皆んなで集まり面白いことをやろうとなった最初の時から、僕たちが掲げているのは「金澤から世界へ」というコンセプトです。独創的な料理と空間を作り、金沢から全国、そして世界へ発信したいと思っています。開業工事中の壁に「金澤から世界へ」という横断幕を掲げたら、当時はすごく笑いものにされましたし、低価格のランチの店が大きなことを言っていると馬鹿にされました。三人で経営するなんて無理とも言われましたが、僕たちはここまで進化してきました。
料理界のトレンドはどんどん変わっていますし、これから僕たちもどんどん進化していくと思います。今後世界が大きく変わっても左右されないくらいに、自分たちを確立していかなければならないと思いますし、地方にもたくさん仲間がいるので、地方からもっと盛り上げていけたら楽しいですね。
梅シェフ:僕たちは単にレストランをやっているわけじゃないんです。文化やシーンを作り、面白いと思うことをやっています。僕たちには次の夢もあり、その夢を叶える料理を作れているか、常に自分たちに問いかけていますし、僕たち自身が作ったものに対して興奮していたいという想いが根本にあります。
ーーー最後に、お二人にとって「おいしい」とは?
梅シェフ:料理を口にした時に発する「おいしい」という言葉がありますが、僕たちは空間を作っているので、「おいしい」は味だけではないと思います。空間やホスピタリティ、食べる時の料理の温かさなど、全てを含めて「おいしい」だと思います。ただ、大前提として料理がおいしくないといけないので、僕たちは全員がまず「味」に全力を注いでいます。食材をどう使うか、どのように調理しておいしくするか、そして僕たち自身が作ったものに対して興奮しているかどうか。これらのことを重視しています。
八木シェフ:僕にとっては感動して泣くくらいが「おいしい」ですね。「おいしい」のために僕たちが懸けてきたものがお客様に伝わったら、「おいしい」が生まれると思います。そして、感動して何回も食べに来てもらえることが「おいしい」の証です。当店に一度食べに来て「おいしかった」と言ってもらっただけでは、本当においしかったのだと思っていません。お客様がもう一度来ていただけたかどうか、これを成功の基準としています。
梅シェフ:僕たちは様々な「おいしい」を引き出すために一週間以上前から下準備などを始め、食材の旨味成分や塩分濃度など緻密に計算して作っています。もしお客様に満足いただけていないようだったら、僕たちの作った「おいしい」は果たして正解だったのだろうかと反省し、どの部分がダメだったのかを振り返ります。もしお客様にご満足いただけたら、自分たちの自信にも繋がります。これからもとことん「おいしい」を追求し続けながら、僕たちにしかできない「面白いこと」を実現させていきます。
国内のみならず、海外からも注目を集める【respiración】のこれまでの軌跡と、これからの未来を歩む上で譲れない熱い想いを語った梅氏と八木氏。息の合った両氏のやり取りから、店名の由来となったスペイン語の「呼吸」という言葉に想いを馳せる。彼らの「ここでしか出せないものを作りたい」という真摯な想いは、金沢の地に根付く歴史や文化・自然に対する敬意と生産者への想いが交わり合い、唯一無二の空間を生み出す。
衝撃を受けるほどおいしくて感動する料理を食べられる機会は人生において何回経験できるか分からない。だからこそ、レストランの概念を覆すようなイノベーティブな体験をしに、ぜひ【respiración】へ訪れてほしい。
取材・文 / 佐田 優佳
撮影 / 中岡 あずさ
Respiration is a unique restaurant set in a historic Kanazawa town house, where you can enjoy the pairing of Japanese flavors with wine. The dishes, which make the most of seasonal ingredients, tell a story in every plate, excelling in both appearance and taste. With attentive service, each visit promises new discoveries and emotions. Enjoy a one-of-a-kind gastronomy experience that reflects the rich nature of Ishikawa Prefecture and the passion of its producers.