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情熱とずば抜けた行動力で新ジャンル「肉割烹」を開拓する、若き料理人の挑戦
2024/12/03

情熱とずば抜けた行動力で新ジャンル「肉割烹」を開拓する、若き料理人の挑戦

阪急烏丸駅から徒歩8分ほどの町家の佇まいに、青い暖簾が目をひく【焼肉やまちゃん】。 和食をベースに、最高級和牛をユニークかつ美しい品々に仕上げるのは、店主の山岸 嗣苑氏。良質な食材へのこだわりをはじめ、日本料理を感じさせる繊細な食の表現は、【富小路やま岸】を営む叔父からの影響だという。営業前に叔父のもとで和食の仕込みを行い、日本料理を学びながら「肉割烹」という新しい領域を追求する山岸氏は、日々料理とどのように向き合っているのだろうか。

日本料理を学びながら、肉本来の旨味を楽しめる料理を追求

ーーー料理人を志したきっかけを教えてください。

学生時代に父が飲食店を始めて、僕がアルバイトをしたことがきっかけです。元々、食べることが好きだったのもあり、どんどんお肉の魅力にのめり込んでいきました。お肉をおいしく提供するためには、切り方や調理の仕方など、様々な要素が絡み合ってきます。どうやったらおいしく提供できるのかということを日々考えているうちに、料理人としてやっていこうと心を決めましたね。

お肉は見た目の美しさだけでなく、色合いによって味の濃淡が変わるというのがとても面白いんです。お肉自体のポテンシャルが低い場合には、どう調理すればお客様においしいと思っていただけるレベルまで引き上げられるかを考えるのも楽しいです。また、お肉といえばワインは欠かせないので、ワインの勉強をしてソムリエ資格も取得し、お肉に合うお酒も一緒に研究しています。

ーーー日本料理も学ばれているそうですね。

営業開始前、毎朝叔父が料理人を務める懐石料理店【富小路やま岸】で仕込みをしています。日本料理は肉料理が全く出てこないジャンルですが、野菜の下処理や魚を捌いたりして、肉料理では使わないような包丁の使い方をするため、包丁の技術がどんどん磨かれていきます。当店はお肉と和食を融合させた「肉割烹」という新しいジャンルに挑戦していますが、和食をきちんと理解している方が見え方も全然変わってくるのでは、という想いがあり、日本料理もしっかりと勉強しています。

ーーー肉割烹の可能性についてはどのように考えられていますか?

正直「肉割烹」という業態はまだ未知数なところがあると思います。日本料理のように歴史があるわけではなく、かといって割烹料理のようにお肉を食べる文化は最近始まったばかりで、僕たちは新しい料理を生み出していく立場なのだという自負があります。「焼肉」というジャンルはすでに歴史がありますが、焼肉と戦えるくらいお客様から求められるような領域作りができたらすごく楽しいですよね。そして、自分たちがいつか「当店のスペシャリテ」と言えるような料理を生み出せる可能性があるところも面白いなと思います。

妥協せず上質な食材にこだわり、独自に肉の仕入れ先を開拓

ーーー食材にはどのようにこだわっていますか? 

最近はSNSが普及して上質なお肉の情報が入りやすくなりました。皆さんから「すごい」と言われる焼肉屋や割烹料理店があれば、自分も食べに行って仕入れ先を直にお聞きして、実際に現地へ出向いて生産者や業者の方々と関係づくりを行うなど、地道に仕入れ先を開拓してきました。

やはり年数が長いお店の方が良質なお肉を仕入れやすく、当店のような新店舗まではまわってこないのが常です。しかし、お肉は肉質とタレとカットが非常に大切で、どれが欠けても駄目なんです。どうしても肉質を追求したくて諦めずに「欲しいです!」と言い続けていたら、「じゃあ若いし頑張ってくれ」と言って取引してくださる業者さんも出てきました。東京食肉市場の【田島健次商店】は、上質な内臓を扱っていることで有名ですが、そちらからも仕入れており本当にありがたいですね。

お肉のカットについては、僕がお肉の筋が嫌いなこともあり、筋を取り除いて提供しています。筋は噛んでいる時にあたったり、飲み込めないというストレスがあるので、お肉を提供するうえではそれをなくしてあげることが大切かなと思います。筋の切り方については、東京の焼肉の名店【炭火焼肉なかはら】の中原さんの元へ勉強しに行き、全種類のお肉のカット方法を学ばせていただきました。当店では筋を一切感じさせないようなカットをしているので、筋が嫌いな方でも抵抗なく召し上がっていただけると思います。

ーーー和食で学んだことはどのように活かされていますか?

当店のタレは出汁ベースで、例えばしゃぶしゃぶでサーロインと野菜をタレにつけて召し上がっていただく料理など、和食の味わいを感じていただける肉料理となっています。ほかにも出汁でジュレを作り、蟹とミノにかけるなどユニークな料理も提供しています。

和食をやっていなかったら、同じ食材でも様々な使い方をする発想は生まれてこなかったのではないかと思います。例えば河豚の白子は様々な表情を見せる食材で、炭で焼いてお肉と合わせることもあります。旬の食材の使い方も学んでおり、それぞれの季節の旬のものをふんだんに使ってコースを構成しています。また、和食では「焼く・煮る・蒸す」これらを全てやっていますよね。お肉は焼くだけになりがちですが、僕は蒸す肉料理など通常とは異なるアプローチをすることもあり、これはなかなか他の店ではできないことかなと思いますし、僕の強みであり武器でもあります。

お客様との対話も大切に、肉料理と和食の絶妙なバランスを追求

ーーーお客様の反応はいかがですか?

和食のテイストを加えることで脂っぽさを感じにくくなるので、お肉を軽く食べたいというお客様のニーズにも応えられていると思います。お客様が食べやすいよう、肉の部位ごとに適したポーションカットもしていますし、白味噌で食べたりしゃぶしゃぶで食べたりと、味が単調にならないようにコースを作り、お客様を飽きさせないよう毎月コースも変えています。

最近では海外からのお客様も増えていて、生肉が苦手な方やタンが食べられない方も結構いらっしゃるのですが、予約時にヒアリングをして当日は違和感がないようにお苦手な部位を省き、違うもので補ってコースを構成しています。やはり和牛は世界でも広く認知されている人気の食材で、皆さん期待して来てくださっているので喜んでいただけると嬉しいですし、その期待に応えていきたいという想いです。

ーーーどのようなスタイルで接客されていますか?

僕自身が喋ることが好きなので、お客様と楽しくワイワイできたら嬉しいなと思います。カウンター席では大皿にお肉を豪快に盛り付けて、僕がそれを持って皆さんのところをまわるなど、パフォーマンスをしがちな傾向もありますが(笑)。また、焼き加減はとても大切なので、個室も含めて全てのテーブルに担当スタッフがつき、そこからもお客様との対話は生まれています。

ーーー料理を作る際に悩むことはありますか?

日本料理を本格的に勉強する中で、料理が和食に寄りすぎてしまうことがあります。反対に、【焼肉やまちゃん】を意識すると焼肉に寄りすぎてしまったりと、「肉割烹」としてのバランスをずっと模索している状態で、試行錯誤していますね。歴史が浅いジャンルだからこそ、なんでもチャレンジできますが、自由ゆえの難易度の高さというのは感じています。

また、和食は「引き算の料理」と言われ、素材の味を引き立てるために無駄な要素を省いていくスタイルです。叔父の影響でお華も習っていますが、お華でも主役をどのように美しく魅せるか考えながら省いていく、そこは日本料理と通ずるところがあります。僕は美しく魅せるために省くというスタイルに憧れていますが、肉割烹はお肉と和食の融合なので最低でも2つの要素があります。自分の料理が足し算になり過ぎていないか、というところが常に一番の悩みですね。

そんな時の料理の落としどころとして、例えば和食に寄った料理でも、是非お客様に召し上がってほしいという時はもう一方の料理を肉料理に寄せるなど、バランスを取って肉割烹としてのド真ん中を狙うようにしています。お客様には最後に「おいしいお肉を食べながら、きちんとしたコース料理を味わえたな」と思っていただき、同じお肉でもこんな表情があるのかと新鮮な驚きも感じてもらえたら嬉しいですね。

毎回お客様に感動を届けられるよう、過去の自分を必ず超えていきたい

ーーー尊敬している方を教えてください。

やはり師である叔父ですね。京都と東京に数店舗出されて成功している方なのに、包み込むような優しさがあり人柄も尊敬しています。食材についてはお金を惜しまずに一級品しか使わず、そうした素晴らしい食材を繊細に扱いながら何を食べているのかがしっかりと伝わる料理を作られています。僕もその姿に影響を受け、良質なお肉を追求するようになりましたし、良い食材を知ると戻れなくなるというのもあると思います。せっかく良いものを知っているのに、そうじゃないものをお客様に出すのも違うなと思い、僕自身もどんどん品質にこだわるようになりましたね。

ーーー叔父様からは日頃どのようにアドバイスをもらっていますか?

試作品を作って料理として提供する前に、毎月必ず試食会をして叔父からもアドバイスをもらっています。おいしいと思っても何を食べているのか伝わらなかったら本末転倒なので、和食の料理人ならではの視点でご意見をいただけるのは貴重ですね。また、話し合いをしている中で面白い料理が生まれたりもします。最近ではお肉と丹波の栗を組み合わせたもので、生肉を漬け醤油につけ、炊いた栗を砕いたものをふりかけて山椒の実を合わせた一品です。栗の甘さと漬け醤油のしょっぱさとが程よく交じり合っておいしくて、そうした新しい料理のアイディアが浮かぶと楽しいですね。

ーーー今後の展望について教えてください。

今の僕はがむしゃらにやらなきゃいけない時期だと思っているので、現在取り組んでいることを繰り返しながら洗練させていき、いつお客様がいらっしゃっても毎回感動を届けられるような店づくりをしたいです。僕は現在25歳で若いが故の尖った料理もあると思いますが、今の年齢だからこそ作れる料理があり、お客様もそれを食べに来てくださっています。来年になればきっと来年しか作れない料理があると思うので、その年その年で最高と思える料理を作り、過去の自分を必ず超えていきたいと思っています。

ーーー最後に、山岸様にとって「おいしい」とは何でしょうか?

「おいしい」と「楽しい」は共存していると思っています。先日、僕は普段と変わらないパフォーマンスができたと思った日に、いらっしゃったお客様同士が料理について語らわれて意気投合されて、僕も一緒に盛り上がったのですが「今日が今までで一番良かったです」と言ってくださったんです。その時に、料理とは空間も含めて「おいしい」なんだと思いましたね。楽しいとか居心地が良いなと思う空間でおいしいものを食べることで、味覚としてのおいしいだけではなく、記憶に残る「おいしい」になる。だからこそ、お客様とのコミュニケーションなど、空間を含めた「おいしい」をこれからも追求していきたいですね。

最高級和牛や新鮮な内臓などを贅沢に使った料理を、上品な味わいの出汁のタレとともにいただく上質な体験。次々と期待を上回る料理が提供され思わず溜め息がもれる。日本料理の技と心を真摯に学ぶ山岸氏はこれからどんな料理人に成長し、「肉割烹」という新領域を切り拓いていくのだろうか。毎年といわず毎月訪れたい、そんな店を発見した喜びを噛みしめながら、奥深い味わいの肉料理をいただく。おもてなしの精神が溢れる店主によって焼かれた極上の和牛料理を味わいに、ぜひ【焼肉やまちゃん】へ訪れてほしい。

取材・文 / 佐田 優佳
撮影 / 中岡 あずさ

店舗情報


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